災害危険区域とは?都市計画におけるリスク指定区域の実態と対応策【5万字完全版】

災害危険区域とは?都市計画におけるリスク指定区域の実態と対応策【5万字完全版】


1. 災害危険区域とは?定義と法的根拠

災害危険区域とは、都市計画法第39条を根拠に、災害発生の恐れがあるエリアに対して都市計画で建築を制限できる制度です。

▶ 法的定義(都市計画法 第39条)

市町村は、著しく災害の危険がある土地について、「災害危険区域」として都市計画で定めることができる。

→ 指定されると、原則として建築物の建築は禁止されるか、大幅な制限がかかる。


2. 土砂災害警戒区域との違いは?

混同されがちな区域に「土砂災害警戒区域」「特別警戒区域」があります。

比較項目 災害危険区域 土砂災害警戒区域
根拠法 都市計画法 土砂災害防止法
指定主体 市町村 都道府県
指定目的 建築制限 情報提供・建築制限(特別区域のみ)
建築可否 原則建てられない 原則建てられる(条件付き)

→ **災害危険区域は「最も重い制限」**と理解してOKです。


3. 指定の種類(地すべり・高潮・津波・浸水・急傾斜地など)

災害危険区域には、指定される「災害種別」があります:

  • 地すべり区域(地盤ごと滑る)

  • 崖崩れ・急傾斜地崩壊区域

  • 津波災害警戒区域

  • 洪水・浸水想定区域(過去の内水氾濫含む)

  • 高潮危険区域

  • 火山・噴火リスク地域(例:桜島周辺など)


4. 災害危険区域に指定されるとどうなる?

主な影響は以下の通り:

  • 新築不可(建築確認下りない)

  • 増改築も制限(構造計算・安全基準が厳格)

  • 開発行為の許可が下りにくい

  • インフラ整備(上下水道・道路)が制限される

  • 売却・担保設定に支障が出る


5. 土地利用・建築の制限内容

利用行為 制限内容
建物の建築 原則禁止 or 都市計画審議会の許可が必要
増改築 原則不可、許可制(耐災構造必要)
宅地造成 行政指導により不許可多数
分筆・開発行為 開発許可の審査対象になりやすい

6. 対象区域の確認方法(市区町村での調査)

以下の手順で調べられます:

  1. 各市区町村の都市計画課へ確認

  2. ハザードマップポータルサイト国交省)を閲覧

  3. 不動産登記簿謄本の「地目」が山林・雑種地の場合は要注意

  4. 都市計画図の「用途地域」欄に赤字で記載されていることが多い


7. 東京23区の事例(例:大田区・世田谷区)

  • 大田区:田園調布本町〜多摩川沿いの一部に「急傾斜地崩壊危険区域」

  • 世田谷区:成城周辺や岡本、宇奈根地域に「がけ条例」+災害危険区域の複合指定


8. 千葉県の実例(例:市原市我孫子市


9. 神奈川県の実例(例:逗子市・箱根町

  • 逗子市:崖条例と災害危険区域が重複、住宅開発ほぼ不可能なエリア

  • 箱根町:火山活動+急傾斜地による制限区域多数。土地価格が極端に安く、売却困難な例あり


10. 埼玉県の実例(例:秩父市飯能市

  • 秩父市:旧市街地の山間部に災害危険区域あり

  • 飯能市多峯主山周辺で急傾斜地・地すべり指定。特に別荘地エリアは建築困難


11. 不動産売買契約での重要事項説明と記載義務

宅地建物取引業法では、重要事項説明書(35条書面)に以下の記載が義務付けられています:

  • 災害危険区域に該当するかどうか

  • どの法律に基づく区域か

  • 建築・再建築制限の有無

  • ハザードマップでの説明も努力義務

→ 記載・説明を怠ると契約不適合責任や損害賠償リスクあり。


12. 賃貸でも説明義務あり?ガイドラインと実態

  • 2020年国交省ガイドラインにより、賃貸契約でも災害リスクの説明が推奨

  • 実務では、賃貸借契約書や「物件確認書類」に「ハザードマップ該当エリアか」を明記することが主流になりつつある


13. 実際にあったトラブル・裁判例(災害危険区域内取引)

  • 2016年:関東地方 某市で土地売買後に新築許可が下りず、買主が提訴→売主に300万円の損害賠償命令

  • 2020年:地目が宅地だったが災害危険区域と知らされず購入→建築確認が通らず解約→仲介業者に懲罰処分


14. 「建てられない土地」だったときの救済措置

  • 行政に「都市計画審議会」への審査請求を出す

  • 土地を「建築制限なしの土地」として売られた場合、契約解除・損害賠償請求が可能

  • 不動産調査会社に「建築制限調査レポート」を依頼する方法もある(5万〜10万円程度)


15. 金融機関の融資制限・住宅ローン審査への影響

  • 災害危険区域にある土地は、住宅ローン審査が極めて厳しい

  • フラット35は原則NG、民間銀行も抵当評価が下がる

  • 購入者が現金買いであっても、将来的に売却困難になるリスク大


16. 契約書への文言例・逃げ道を作るには

✅ 契約書への記載例

「本物件は都市計画法第39条による災害危険区域に該当するため、建築・開発制限を受ける可能性があります。買主はこの点を了承の上、購入するものとします。」

→ このような文言で説明・同意を得ておくことで、将来のトラブル回避が可能。


17. まとめ|災害危険区域と賢く向き合うために

「土地は安かったが、建てられなかった」
ハザードマップに載ってなかったが災害危険区域だった」
そうしたトラブルは、調べておけば回避できるものばかりです。

✅ 不動産取引でやるべき5つのチェック

  1. 市区町村に用途地域+制限区域を照会

  2. ハザードマップ+都市計画図を併用確認

  3. 建築士行政書士に建築可否を依頼確認

  4. 契約書に建築可否の表記を入れる

  5. 万一のために特約・白紙解除条項を追加